幸せってなんだっけ?

今日、工藤新一に会った。
寝ぼけているわけではなく、会ったのだ。
APTX4869で小さくなる前の工藤君に。
都内にある一流ホテル、リッツカールトン東京に用事があり立ち寄った。
45階のメインロビーにたどり着くと、室内に滝の流れる和風のテイストを織り混ぜた、落ち着いた空間を感じさせた。
天井は高く、小ぶりながらも一際輝くシャンデリア。洒落た照明に窓から見下ろす雨の六本木。
各界の著名人達がテーブルで談笑している。僕の隣にある家族が近寄ってきた。
そう、彼等こそ工藤一家である。
優作氏、有希子夫人と共に現れた新一君は、先日のノーベル賞についての会話を繰り広げていた。(決して出歯亀した訳では無く、聞こえてしまったのだから仕方あるまい。)
工藤夫妻はどうやら授賞式に足を運んだようで、式での受賞者の言葉を新一君に伝えているようだった。
『standing on nothing』という単語が印象的だったが、上手く会話は聞き取れない。
新一君は大変興味深そうに、夫妻の話を聞いていた。
そして、新一君はノーベル受賞者の言葉に共感、理解したように、感想を述べていた。
内容こそ分からなかったが、その顔はまるで事件に関する重大な証拠を手にいれたときの様な、あの生意気な笑顔をして、嬉しそうに話していた。
僕は普段訪れることの無い場所で、マンガに出てきそうな人物の存在を知り、考えた。
ここにいる成功者たち、僕よりも遥かに知識、経験のある工藤君。彼等からして見れば、僕たちが毎週話していることや、悩んでいる事、追いかけている夢なんて、既知事項であったり、小さな問題だったりするのかな、と思ったら、何のために悲しんだり、喜んだりしているんだと、虚しくなった。
彼等からしてみれば、悲しむほどの事でも無く、喜ぶほどの事でも無いのかもしれない。住む世界が違うから?育った環境、努力した大きさが違うから?
僕は金持ちになって、羽振りの良い毎日を送るのが夢ではないが、憧れないといえば嘘になる。
彼等の様な人生も送ってみたい。
しかし、公園に行くと良く感じることだが、金はなくとも平凡に、安泰に暮らす家族にも憧れる。
成功者は仕事に追われ、家族を何よりも愛する人は家計に追われる。
両立している人は、一体この場にいるのだろうか?
人は自分に無いものを持つ人に憧れを抱くと言うが、僕には両方共持ち合わせが無いから、こう感じるのだろうか?
テレビを随分見ていないから、内容は知らないが、いつかあった番組で、細木数子さんの『幸せってなんだっけ?』というフレーズが甦った。
ここにいる人たちは見つけたのだろうか?
幸せって、何なのかを。